かつては横浜市が計画するIRへの参入意欲を表明していたアデルソン氏。2020年5月、日本市場への参入を断念すると発表したが、「孫正義氏のようなリスクテイカーと組みたい」と公言していたことでも知られる。
アデルソンは、貧しい家庭で育った。しかし、12歳で新聞販売のライセンスビジネスを開始するなど、少年期から起業家としての才気を発揮。破産の憂き目に遭いながらも、30歳になるまでに50以上ものビジネスを作り上げ、1970年代に当時最先端であったコンピュータービジネスへと活路を見出す。
1979年、IT関連商品の見本市「COMDEX」をスタート、1995年には世界最大規模のコンピュータ展示会へと成長した同見本市を孫正義氏に売却。その資金を活用してカジノ事業を切り開いていく。
彼が画期的だったのは、それまでのテーマパーク型のカジノ設備に加え、ITビジネスの経験を活かしてビジネスに対応できる多様な設備を導入した点だ。その結晶体が、2010年にオープンしたシンガポールの「マリーナベイサンズ」だろう。MICEの重要性を全面に打ち出す画期的なIRを作り出し、絶対的な評価を手に入れた人々は彼を「カジノ王」と呼んだ。
たしかにアデルソンは日本市場への参入を断念した。しかし、何が起こるかわからないのがカジノだ。現代的なIRを作り出すには、ラスベガス・サンズの見地があるにこしたことはない。偉大なる船頭なき後、ラスベガス・サンズがどのような舵取りを行うかのか――要注目だ。