2024年10月、大阪市はIRの運営事業者へ建設予定の約93%の用地を引き渡した。これにより今後本格的な工事が行われることとなり、2030年秋頃の開業が実質的に確実となった。
運営事業者による期限前の解除権放棄
大阪IRは、合同会社日本MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックス株式会社を中核に構成される「大阪IR株式会社」が運営事業者である。23年9月に大阪市と実施協定を結び、夢洲のおよそ49万㎡の土地を35年間借り上げる「借地権設定契約」を締結している。
実施協定には、7つある条件が全て整わなかった場合、26年9月までは違約金0円で事業から撤退することができる「解除権」が含まれていた。しかし、運営事業者は24年9月に期限を待たずして解除権を自ら放棄。同月、大阪府の吉村洋文知事は会見で「2030年の大阪IRの開業がほぼ確実となった」と発言している。
7つの条件には、国内外における観光需要がコロナ禍より前の水準まで回復していることや、初期投資の金額が1兆2700億円以上に膨らまないことなどが含まれていた。
大阪市から運営事業者へ約46万㎡の用地引き渡し
建設予定地である人工島の夢洲では、すでに23年12月より地盤の液状化対策工事が進められていた。運営事業者側が「条件が整った」として解除権を放棄したことにより、大阪市は24年10月1日に貸し出し予定の約49万㎡のうち、約46万㎡の用地を引き渡した。残り約3万㎡に関しては、25年に開催が予定されている大阪・関西万博で使用する範囲。
これにより、運営事業者は大阪市へ月額約2億円の賃料を支払うこととなり、今後は本格的な準備工事が開始される見通しだ。当初の計画では、25年春に建物着工の作業が行われる予定。
大阪・関西万博の開催中は工事内容を調整
工事を巡っては、建設予定地が25年4月に開幕する大阪・関西万博会場に隣接しているため、日本国際博覧会協会の十倉雅和会長(経団連会長)より会期中の中断を要請されていた。しかしながら中断となると、30年秋頃の開業に遅れをきたすこととなる。そのため、大型重機が稼働する工事ピークの時期を万博閉幕後に変更することで調整された。
最終的には万博を所管する経済産業省の仲介により、騒音や景観の問題が生じないように最大限配慮する形が取られた。
日本初のカジノを含む統合リゾートということで、今後も大阪IRからは目が離せない。
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