カジノIR

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日本のカジノIR認定の傾向と対策

「日本のカジノIR認定の傾向と対策」の概要

ついに大阪にIRが誕生する――。その一方で、長崎の願いは届かなかった。 紆余曲折あった認定までの道のり。なぜ大阪だけが認められたのか?

どうして大阪は認定され、長崎は不認定なのか?

2023年4月、政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に関して、大阪府と大阪市の整備計画を認定すると決めた。IR実施法(正式名称は「特定複合観光施設区域整備法」)が成立したのは、さかのぼること2018年7月のこと。約5年をかけて、ようやく大阪にIRが誕生することが正式に決まったわけだが、スタートラインに立ったに過ぎない。
というのも、開業は2030年秋を予定しているため、私たちがIRを体験できるのは、大分先のお話。韓国やマカオのIRが進化している中で、「こんなにのんびりしていて大丈夫なの?」と勘ぐってしまうが、その心配は杞憂に終わりそうだ。
国内外のIRに関する制度、市場、企業の調査を行い、「カジノIRジャパン」を運営するキャピタル&イノベーションの小池隆由氏は、「大阪が提示している数字は信用ができます」と説明する。


大阪府・市(以下、大阪)が国に提出した整備計画大阪によれば、IR創設にともなう初期投資額は1兆800億円(その
後、建設資材費の高騰などを反映し、1兆2700億円に修正)。また、来訪者は年間2000万人、年間5200億円の売り上げを見込んでいる。
「年間5200億円の売り上げで、当期利益は700億強と想定しています。税引前当期営業利益と減価償却費を足したものをEBITDAと呼ぶのですが、この数字は営業キャッシュフローまたはキャッシュベースの利益と考えることができます。EBITDAを計算すると、年間2000億円前後になるため、初期投資に対して十分回収できると思われます」(小池氏、以下同)
小池氏は、山一證券やゴールドマン・サックス証券などの投資銀行で、20年以上にわたって証券アナリストとして活動していたファイナンシャルのプロでもある。「世界のIRの相場は、EBITDAの5~7倍の初期投資額になる」といい、途方もない額のように思える1兆2700億円という初期投資は正当的な数字だという。イレギュラーなことが起こらない限り、開業から6年ほどで回収が見込める。もっと言えば、「保守的な数字を提示してきたとも言える」と小池氏は続ける。
「シンガポールの2つのIRであるマリーナベイ・サンズとリゾート・ワールド・セントーサの売上高合計は、2011-15年平均では約5000億円でした。2つのIRの初期投資額の合計は、1兆円強でした(当時の為替レート)。大阪IRの数値は、これらと近い数値です。しかし、大阪の経済条件は、一段良いと考えられます。例えば、日帰り圏人口は、シンガポールは概ね500万人ですが、大阪は1,000万人以上です」
唯一懸念材料を挙げるとすれば、日本のIRはGGR課税率が日本の方が高いことだという。一般的にカジノを含むギャンブル市場規模はGGR(グロスゲーミングレベニュー)と呼ばれる数字で表現される。
GGRとは総粗収益を意味し、分かりやすく言えば事業者の取り分のこと。事業者の取り分に発生する税率が、シンガポールより日本の方が高いため、若干のズレはあるかもしれない。それでも、大阪が算出した数字は「合理性がある」と小池氏は語る。
大阪のIRは、アメリカ・ラスベガスに本社を置く、統合型リゾート運営会社MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが中心となり、パナソニックホールディングスやダイキン工業といった関西企業など20社が出資する共同事業体「大阪IR株式会社」が運営を担う。名だたる企業が集結したのは、数字に正当性があったからに他ならない。勝算がある――。だからこそ、大阪は政府から認定されたのだ。

メイクセンスしない数字を算出した長崎

国に整備計画を申請したのは、大阪以外にもう一ヵ所あった。長崎県(以下、長崎)である。実は、長崎が不認定した理由こそ「数字に正当性がなかった」ことだと小池氏は教える。
そもそもの話。まず自治体がIR基本構想を作り、それを元に実施方針を決め、RFP(RequestforProposal)と呼ばれるIR事業者の公募を実施する。たとえば、大阪府・市のケースでいえば、RFP提案を募集したところ、MGMとオリックスのコンソーシアム(共同企業体)から提出があった。

「長崎は基本構想の段階で間違えてしまった。最初が間違っているわけですから、以後、ボタンの掛け違いが生じる。どういうことかというと、基本構想で設定した投資額のガイドラインが実情に合っていなかった」長崎の初期投資額は、約4383億円と公表されている。年間売り上げに関しては、5年目で約2716億円と算出していた。とこ
ろが、「長崎の経済規模ではメイクセンスしない数字」と小池氏が話すように、大阪が年間5200億円に対し、長崎が約2716億円というのは、いささか強気な数字だろう。長崎は、日帰り圏人口、訪日外国人数などの指標は大阪の1割ほど。大阪のおよそ半分の売上げを見込むのは、さすがに無理がある。
では、どうしてこのような数字になったのか?苦笑交じりに小池氏が語る。
「基本構想を作る際、RFI(RequestForInformation)といって、関心のある事業者から数字を含めたアイデアを


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この記事の監修者

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